統計史上、最も暑い夏~その原因は?

2023年9月25日

 この夏は、北日本や東日本を中心に厳しい暑さとなりました。夏の日本の平均気温としては、統計を取り始めて以来、最も高くなりました。

◆太平洋高気圧が北日本へ張り出し、偏西風が北に蛇行

 暑さの原因は、太平洋高気圧が北に張り出し、偏西風を北海道の北まで押し上げたことが一因です。太平洋高気圧に覆われると晴れて暑くなりますが、これに加えて、大陸からのチベット高気圧が張り出して重なり合い、「高気圧の二段重ね」となりました。このため、地上から上空1万メートル以上の高さまで高気圧となり、夏の強い日ざしで暖まった熱が日本列島を覆いました。そして、暑い空気と涼しい空気の境目を流れる偏西風が北海道の北まで北上し、本来は涼しいはずの北海道まで暑い空気が流れ込みました。

◆ラニーニャ現象の影響が残り、正のインド洋ダイポールモード現象の発生

 なぜ、日本列島でこのような「高気圧の二段重ね」が起こったかというと、それは二つの理由からフィリピン周辺で雲がたくさんできたためです。

一つ目の理由は、ラニーニャ現象の影響が残ったことです。冬までは、ラニーニャ現象が発生していました。ラニーニャ現象が発生すると、フィリピン周辺の海面水温は上昇します。この夏は、ラニーニャ現象が終わりましたが、フィリピン周辺の海面水温の高い状態は残りました。海水温が高いと、雲がたくさんできます。

二つ目の理由は、インド洋の海面水温が影響しました。正のインド洋ダイポールモード現象と言って、インド洋の東側で海面水温が低くなり、冷たく重たい空気の影響で高気圧ができました。この高気圧からふき出す風が、フィリピン周辺の海面水温の高いエリアにふき込んで、さらに雲がたくさんできました。

こうして、フィリピン周辺で雲がたくさんできると、太平洋高気圧が北に張り出し、チベット高気圧が日本列島に張り出し、偏西風を北に押し上げて猛暑になります。雲ができるということは、そこには上昇気流があり、上空に上った空気が日本列島に吹き降りて「二段重ねの高気圧」ができるわけです。

気象防災アドバイザー・気象予報士・防災士 平井信行

令和5年9月25日