偉大な気象キャスター中村次郎さんを偲ぶ(月刊公民館より抜粋)

長年、NHKの気象キャスターをされていた中村次郎さんが、昨年12月に85歳でお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
中村次郎さん(以下、次郎さん)は、私の尊敬する気象キャスターでした。70歳ぐらいまでNHKにご出演されていました。群馬県出身で県代表の国体スケート選手という強靭な体力の持ち主でした。飾らないお人柄で、みなさんから「次郎さん」と呼ばれていました。私のことを「のぶさん」と呼んで下さり、プライベートでも親しくさせて頂きました。「次郎さん」のことを綴らせて頂きます。
◆ちゃんと調べて気象情報をしなさい
次郎さんが口癖にされていた言葉は「ちゃんと調べて気象情報をしなさい」でした。いつも辞書や専門書を見ておられた姿を思い出します。言葉を大事にされていたので、放送でも決して思い付きで軽口をするような方ではありませんでした。素朴な語り口が印象的でした。だからこそ、発する一言の重みがあり、信頼性が高かったのだと思います。
私が若かった頃、小春日和という言葉を調べていた時のことです。小春は旧暦10月の別称なので、私は旧暦10月1日を過ぎたら使っていいのだと思っていました。ところが次郎さんは、「小春日和は冬の季語なので立冬を過ぎないと使っていけない」とおっしゃいました。小春日和は、旧暦と季語の二つの条件が関わっていることを教わりました。
それ以降、私も辞書や季語辞典で必ず言葉を調べるようになりました。たとえば、「三寒四温」は、春の気温の変化を表すのものだと誤解されています。しかし、辞書によれば、三寒四温は冬の季語で冬の寒さの強弱を表します。こうして、ちゃんと調べると本当の言葉の意味がわかります。これを気象情報に活かすようにしています。
◆還暦投手、35度の炎天下で完封勝利
次郎さんは、スポーツ万能で野球も得意でした。地元の少年野球のコーチをされていました。私も次郎さんと同じ野球チームに長年所属し、一緒にプレーをしていました。次郎さんは左投手、私はキャッチャーでバッテリーを組んでいました。
次郎さんはコントロールの良い投手で、フォアボールはほとんど出しませんでした。牽制球がお上手で、一塁にランナーがいても牽制でアウトに取ることができました。スケートで鍛えた強靭な下半身をお持ちでしたので、還暦になってからも長い投球回数を投げて平気でした。ある夏の日の試合、35度の炎天下で投げ抜き、相手チームを零点に抑えて勝利投手となりました。
今年、私が59歳になりますから、今、次郎さんと同じことをやれるかというと絶対に無理です。次郎さんの強靭な体力と強い精神力は伝説に値します。そんな次郎さんのことを思い出しながら、新年度もNHK首都圏ニュース845の気象情報を一日一日大事に担当させて頂きます。
2026年2月
気象防災アドバイザー・気象予報士・防災士 平井信行