東京から富士山の見える日数増加~東京の空気が綺麗になった!

2023年3月25日

東京から富士山の見える日数増加~東京の空気が綺麗になった!

(東京都観測、2003年~2021年度)

 最も富士山の見えた日数の多い月は、1月で19日、その次が12月の18日、3番目に多いのが2月で13日となっています。一年間では95日富士山が見えるので、12月から2月までの3か月間の冬が半数を超えています。

 なぜ、冬に富士山が多く見えるかというと、空気が乾いているからです。冬の関東平野は周囲の高い山に囲まれているので、雪雲は遮られます。このため、晴れて乾いた空気に覆われます。特に北風が強い日は、首都圏のよどんだ空気を一掃しますから、より見えやすくなります。いわゆる冬型の気圧配置となると、乾いた北風、空っ風が関東平野を吹き渡ります。そうなると、富士山がよりはっきりと見えます。

 一方、最も富士山が見えない季節は夏です。6月から8月の3か月間で6日しか見えません。6月から7月は、梅雨ですから雲に覆われるのが大きな理由です。梅雨が明けた8月でも、湿度が高く白っぽい空になるので富士山は見えにくくなります。空気の澄んでくる秋からは見える日数が増え、冬に最も多く見え、春になるとだんだんと見えなくなります。春は晴れが多いのでたくさん見えるのではと思いがちですが、春霞と言われるように花粉や土埃が舞いやすく、空気中の水蒸気も増えますから、次第に空気の透明度はなくなってきます。

 富士山の見える時間帯は朝です。これは、人間活動の影響が小さく、空気が澄んでいるからです。昼間は、人間活動による大気汚染や、日ざしで地面が暖まって起こる対流で地面付近のホコリが舞い上がります。

 年々の富士山が見える日数の変化を見ると、近年は東京から富士山の見える日数が増えてきています。たとえば、2003年度は74日だったのが、2017年度から2021年度までの5年間は毎年100日を超える日数となっています。なぜ、このように富士山が見える日数が年々増えているかというと、一つの原因は大気汚染が改善されているからと考えられます。大気汚染物質の規制が強化され、空気が綺麗になってきているといえるでしょう。

 このように、富士山が見えるということは、空気が綺麗なことの証でもあります。

2023年3月1日

気象予報士・防災士 平井信行