故郷・熊本県八代市で講演~八代と東京の気候を比較
2024年12月14日、故郷・熊本県八代市において、八代市教育委員会主催の講演会を行いました。生まれ育った場所から講演会をお願いされるのは大変光栄なことで、オファーを受けた春から楽しみにしていました。講演の演題は「私の夢を育て、鼓舞した八代の気候」でした。講演会の準備の段階で八代市の気候を調べていると、興味深いことがわかりました。現在、仕事をしている東京と比べてみることにしました。
■八代市の梅雨の降水量は東京都心の2.5倍
八代市の平年(1991年~2020年の平均値)の6月、7月の降水量は812.9㍉です。八代市の年間降水量が2058.6㍉ですから、梅雨期間に雨が集中して降るのがわかります。年間降水量に対する梅雨期間(6,7月)の降水量は、約4割を占めます。東京都心と比べると、東京都心の6月、7月の降水量は324㍉、年間降水量は1598.2㍉ですから、年間降水量に対する梅雨の降水量は約2割です。梅雨期間の降水量だけで見ると、八代市の降水量は東京都心の約2.5倍にもなります。東京の梅雨の雨はおとなしいな、と感じていましたが、数字で見ると納得です。
東京の梅雨時の雨の降り方は、どちらかというとシトシトと降るタイプです。一方で八代の梅雨時の雨の降り方は、ザーザーと降るタイプです。雨に当たると、痛いぐらいの大粒の雨がたたきつけます。傘をさしていると、傘が重たくなるような感じになります。ですから、梅雨になると故郷の球磨川は溢れ、水害をもたらしていました。これが私を気象の世界に導き、水害を防ぐために気象予報士になろうと思ったきっかけでした。
■八代市の気候は温暖、しかし、冬は東京都心より冷え込む!?
八代市の年平均気温の平年値は17.0℃、東京都心は15.8℃ですから、八代市の気候は東京都心よりも温暖です。確かに、東京にいると夏が短いな、と感じます。最高気温が25℃以上の夏日日数を見ると、八代市は151.5日、東京都心は118.5日です。つまり、八代市は東京都心よりも約1か月、夏が長いことがわかります。確かに、高校生まで八代市に住んでいて、秋の運動会シーズンは暑いと感じていました。
最低気温が25℃以上の熱帯夜の日数を比較すると、八代市は17.1日、東京都心は17.8日とほぼ同じです。むしろ、東京都心の方がわずかに上回っていることに驚きです。また、最低気温が0℃未満の冬日の日数を比較すると、八代市は17.5日、東京都心は15.2日です。年間を通してみると温暖な八代市は、冬の朝に限ってみれば東京都心よりも冷え込むことが多いのです。
これは、東京都心の都市化が影響しているものとみられます。都市化の影響は、最低気温に顕著に現れるといわれています。昼間にアスファルトやビルに溜まった熱が、夜間に空気中へ放出されるからです。
このように、故郷を俯瞰してみることで、故郷の自然環境の豊かさを再確認することができました。故郷で講演する機会を頂いたことに、改めて感謝申し上げます。
2024年12月28日
気象防災アドバイザー(国土交通省委嘱)・気象予報士・防災士
平井信行