エルニーニョ現象発生か~梅雨末期の大雨警戒

2023年7月4日

 

気象庁は5月12日時点で、この夏はエルニーニョ現象の発生確率が80%と発表しました。エルニーニョ現象が発生すれば、2018年秋から2019年春の期間に発生して以来ということとなります。夏にエルニーニョ現象が発生すると、天候不順になる傾向にあり、梅雨末期の大雨にはいつも以上の警戒が必要です。

◆エルニーニョ現象は、気候変動の原因の一つ

エルニーニョ現象は、ペルー沖の海面水温が通常より高くなることで、自然変動で起こる気候変動の原因の一つです。この冬は、ラニーニャ現象の影響で北日本中心に寒い冬になりましたが、ラニーニャ現象はエルニーニョ現象とは逆に、ペルー沖の海面水温が通常よりも低くなることです。このようにして、ペルー沖の海面水温は高くなったり低くなったりして、世界的に気候変動をもたらしています。

◆エルニーニョ現象と夏の天候

エルニーニョ現象が発生している時の夏は、西日本や北日本を中心に冷夏となる傾向にあります。梅雨明けは、四国、中国地方、奄美地方、沖縄地方を中心に遅くなる傾向にあります。つまり、夏の天候をもたらす太平洋高気圧の張り出しが、いつもの年と比べて弱く、遅くなります。梅雨が長引き、梅雨末期の大雨のおそれがあります。特に、九州北部地方や山陰地方などの西日本の日本海側では、梅雨期間(6月~7月)の降水量が過去の統計から57%の確率で平年よりも多くなります。梅雨前線が対馬海峡から日本海まで北上し、前線の南側に入った時は特に、線状降水帯による豪雨に警戒してください。

◆インド洋の海面水温の変化も気候変動をもたらす

インド洋も自然変動によって海面水温が高くなったり、低くなったりを繰り返します。東(西)部で海面水温が低くなり、西(東)部で高くなることを正(負)のインド洋ダイポールモード現象といいます。この夏は、インド洋の海面水温は東側で低く、西側で高くなる正のインド洋ダイポールモード現象が発生するとみられます。このような時の夏は、西日本や東日本を中心に猛暑となる傾向がります。このため、この夏、日本への影響が気になります。

◆この夏、エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象の同時発生でどうなる?

エルニーニョ現象では冷夏になる地域がある一方で、正のインド洋ダイポールモード現象では猛暑になる地域があります。では、この夏のように、両者が同時に発生する夏はどうなるのでしょうか。 過去のデータを調べると、2015年の夏は両者が同時に発生しました。この時は、西日本は冷夏、多雨になり、北日本では猛暑になったものの、8月中旬からは前線や台風の影響で北日本や東日本も大雨となり、9月も天候不順が続き「平成27年9月関東・東北豪雨」が発生しました。

2023年5月27日 気象防災アドバイザー・気象予報士・防災士 平井信行