豪雨をもたらす線状降水帯の予測へ
◆線状降水帯予測の課題
積乱雲が次々と同じ場所で発生して直線状に並ぶ「線状降水帯」は予測が難しく、今後の課題とされています。
令和2年7月豪雨では、線状降水帯が熊本県南部にかかるおそれがあると私が危機感を持ったのは、豪雨発生の約6時間前でした。ただし、その時点で気象庁の予想雨量は24時間で最大200㍉と、実際に降った最大雨量の半分以下でした。このように、線状降水帯では予想雨量をはるかに超え、球磨川氾濫時のように深夜になると情報が伝わらずに逃げ遅れてしまいます。
線状降水帯が、「いつ」、「どこで」発生し、「どのぐらいの雨量」になるかを、できるだけ早い段階で正確に予測することができれば防災に貢献できます。気象庁では、令和3年度の取り組みの一つとして「線状降水帯の予測」を予算に計上しています。
◆気象庁の線状降水帯予測への取り組み~雨雲の元となる水蒸気量の観測強化
令和3年度からは梅雨時における東シナ海の洋上観測を強化します。線状降水帯は、東シナ海からの湿った暖かい空気が九州付近で収束することで発生することがわかっています。線状降水帯の風上にあたる東シナ海の水蒸気や大気の流れを正確に捉えることができれば、予測精度の向上につながります。
また、陸上においても水蒸気量の観測データが不足しています。それを解消するために、令和3年度から全国約20キロ間隔で観測しているアメダスに「湿度計」を設置します。湿度の観測を新たに加えることによって陸地のきめ細かな水蒸気の流入量が把握できます。
◆気象庁の線状降水帯の予想に期待
このような観測の強化などにより、令和3年度からは「線状降水帯注意情報」(仮称)を発表し、「〇〇地方では、線状降水帯が発生しつつあります。」という内容で地域を限定して注意喚起をする予定です。さらに、令和4年度以降にはAI技術なども活用し、半日前から線状降水帯などによる特別警報級の大雨発生確率情報を分布図形式で提供する予定です。
気象予報士・防災士 平井信行 2020年11月24日